Zine
小林昭広さん
鳥の目線で自然を感じる。 ツリードームで、非日常の体験を。
地域おこし協力隊として、南信州観光まちづくりセンターに勤務し、ツリードームの運営に関わる小林昭広さん。ツリードームの導入から滞在プログラムの考案まで、自然を活かしたコンテンツで松川町を盛り上げる小林さんに松川町での楽しみ方や想いをお聞きしました。(2020年3月)
インタビュー動画(3分15秒)
きっかけは、絶滅危惧種の動物たち
──小林さんは松川に移住されてからどのくらいなのでしょうか?
小林昭広さん(以下、小林) 今年で3年目です。それ以前は、白川郷で自然体験のできる宿泊施設に勤めていました。さらに前は、東京で森林再生や環境教育を行うNPOにいました。
──自然や環境に関心をもつようになったきっかけを教えていただけますか?
小林 僕は猫が7匹、犬が3匹いるような家で育ったんです。家族全員、動物が大好きで、ずっとムツゴロウ王国に憧れていました(笑)。田んぼでウシガエルを捕まえたり、ザリガニを取ったり、自然が身近な環境で育ったので、動物や自然には昔から関心がありましたね。
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小林昭広さん。ここでは焚き火を楽しむことも可能
小林 環境問題に興味を持つようになったのは小学校高学年の頃。図書館で絶滅危惧種の本を読んだときに動物だけではなく、人間もやばいぞ!と、衝撃を受けたのがきっかけです。
それから学生時代は環境問題を学び、啓発活動など様々な活動をしていました。その活動を通じて、環境問題に関心を持ってもらうためには、自然を大切に思うことや自然の魅力を感じてもらうことが大事だと思い、今の仕事に繋がっています。
──今は具体的にどのようなお仕事をされているのでしょうか?
小林 地域おこし協力隊として、 南信州まつかわ観光まちづくりセンターに勤務しています。主な業務はツリードームの運営や、まつかわ・南信州の魅力に気づいてもらえるような自然体験のプログラムを考えたりしています。
自然の世界の入り口へようこそ
──こちらのツリードーム、見ているだけでワクワクしてきますね。
小林 ツリードームは2本の木に吊られているため、非日常の時間を過ごしてもらうことができます。宙に浮いているので鳥の目線になれたり、木が揺れると気持ち良い揺れがあるので自然とひとつになれる感じがして癒されますよ。もちろん、安全に過ごせる設備になっていますのでご安心ください。
ここには吊り下げ式の「空/SORA」サイトと「森/MORI」サイト、据え置き式の「土/TSUCHI」サイトの3つのタイプのツリードームがあります。「空/SORA」はアルプスを眺めることができ、アウトドア初心者に適しています。「森/MORI」は森の中で過ごす非日常感が魅力。「土/TSUCHI」は小さなお子さんでも泊まれる、まったりしたい人向けのサイトとなっています。
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吊り下げ式のサイト「空」のようす
──アウトドア初心者でも楽しめるのですね。
小林 ここはキャンプのようにいろいろな道具を用意しなくても手ぶらでOK。初心者の方でも簡単にアウトドアを楽しんでいただけます。また準備・片付けを気にせずのんびりとアウトドアを楽しみたい人にとってもこの気軽さは魅力的ですよね。ここがアウトドアや自然への入り口になったらいいなと思っています。地産地消のバーベキューセットもおすすめですよ。
──食事も美味しそう……!
小林 地域のお肉や野菜、デザートも充実しています。「くだものの里」まつかわならではの旬のフルーツを堪能できるのも贅沢ですよね。朝食は、町で人気のパン屋さんのパンと本格コーヒー。地域のものにこだわった食事は、毎回とても喜んでいただいています。
それから、多くのお客さんが感動されるのが夜の時間です。静寂に包まれた中、空を見上げると現れる一面の星空と、幻想的に浮かんで見えるツリードームに感動される方が多いですよ。この場所は人が住むエリアの端っこ、生き物や自然の世界の入り口だと思っています。
身近な自然が宝物になる、森あそび。
──この場所では、そのほかどのようなことができるのでしょうか?
小林 森の中で遊ぶことができますよ。詳しく解説をするよりも実際に森に入り、自然の中での気づきや発見から、自然に興味を持ち、好きになってもらいたいと思っています。
──森の中でどのように遊べるのでしょう。
小林 “身近な自然が宝物になる”をコンセプトに「森ナビさんぽ」という名前のプログラムを行なっています。ツリードーム周辺の森で、川のせせらぎや鳥の声などの音を感じ、五感を使った時間を過ごしてもらいます。
たとえば都会だと、無意識のうちに聞かないようにしている音がある気がしませんか? 音をただ聞く時間ってとても豊かだと思うんです。それだけで感動されている人もいますよ。あと、お子さんにはゲームをしてもらったり。
──ゲームもいいですね。
小林 はい。今は「めだまっち」という、目玉のシールを渡して森の中の好きなところにつけてもらったり、森の中で色を探して来てもらう「色探し」をやったり。なんでも教えるのではなく、気づきのきっかけを作るようにしています。
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落ち葉を集めて”色採集”を
小林 あとは動物や虫が好きなお子さんでしたら、虫取りも沢山できますし、近くにフォレストアドベンチャーがあるので、そこでも楽しめますよ。
感じて、考えて、そして好きになる。
ーー今後、この場所をどのように盛り上げていきたいとお考えですか?
小林 森林セラピーやヨガや瞑想などの癒しのプログラムも組み合わせていきたいですし、お子さんが楽しめるプログラムももっと作っていきたいですね。ここを拠点に松川や南信州の魅力に気づいてもらいたいと思っています。
やはり、環境問題や地域の問題は、自分で体験したり、感じてみないとなかなかその先の行動は難しいものだと思っています。感じて考えてもらい、この地域を好きになる、というような。来ていただいた方の今後の人生や、社会が良くなるきっかけになったらいいなと思います。
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──では、最後に小林さんにとっての松川町の魅力を教えていただけますか?
小林 愛知や東京からアクセスが良いのに、自然が豊かで遊べる場所がたくさんあるのが魅力的だと思います。ここ伊那谷は秘境の地とは違い、いろんな近隣地域と繋がっているのも良いですよね。あとはやっぱり山の大きさ。この2つのアルプスが眺められる景色は素晴らしいですよ。空も広く、とても開放感のある場所だと思います。
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こばやし・あきひろ
自然教育や環境に関するNPO等で経験を重ね、2016年に松川町へ移住。現在は地域おこし協力隊としてツリードームスタッフとして施設管理を行いながら、まつかわの「だんだん好きになる旅プログラム」の開発等も行なっている。