Zine
竹村暢子さん、竹村剛さん
ここは松川町、シードルブームの発信地。 自由で楽しいシードルの世界に魅せられて。
2018年に立ち上がった株式会社VinVieのおふたりは、松川町のシードル文化には欠かせない存在。今回お話をお伺いする、暢子さんは株式会社VinVieの代表、剛さんは株式会社VinVieの醸造家としてそれぞれが得意な分野で、シードルの文化や農業、地域の魅力を世界へと発信されています。おふたりが描く今後の活動や松川町のシードルブームについて話をお聞きしました。(2020年3月)
インタビュー動画(3分31秒)
松川町、シードルブームのはじまりは?
── 松川町ではシードル文化が根付いていますよね。この町のシードルの特徴を教えていただけますか?
竹村暢子さん(以下、暢子) この町は果物の産地なので、何十種類ものいろんな品種のりんごをブレンドして作れるのがまず大きな特徴です。農家ごとにカラーの違った味ができるのが本当に面白いですよ。1農家で2~3種類のブランドがあったり、種類の豊富さも特徴ですね。
── おふたりがシードルを作られるようになったきっかけは……?
竹村剛さん(以下、剛) 僕はもともとバイクの整備士をしていたんです。いつか6次産業に関わりたいと思い、ワイナリーへ修行に行ったのがはじまりです。
今は、VinVieの醸造を担当しており、信州まし野ワインの顧問もしています。シードルの醸造を始めたのは5年前くらい。松川町に醸造家として来たタイミングと、この地域でシードルを作ろうというタイミングが重なり、最初は様々な農家さんのオーダーに答えていくのが大変でしたね(笑)。
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写真左:竹村剛さん、写真右:竹村暢子さん
暢子 私は一番最初に剛さんにシードルの醸造をお願いしたんです。当時はいわゆる普通のりんご農家でした。今は、りんごの栽培の他に、株式会社VinVieの代表と南信州まつかわりんごワイン・シードル振興会の広報をしています。
農家でもりんごのお酒を作って、販売できることを知り、最初は5件の農家で協力しようと始まったのが「南信州まつかわりんごワイン・シードル振興会」です。1年後にはこの「Marry.」(2014年)が完成しました。
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一番最初に作られた「Marry.」はおふたりにとっても特別なシードル
── 最初のシードルが完成したときの感想は?
暢子 想像していたより辛口ドライになり、味の深さに驚きました。当時はまだシードルを知らない方がほとんどだったので、知っていただくには作り方から飲み方まで丁寧に語っていく必要があると思い、まずは町内でイベントをするところからスタートしました。
── 地元消費からまずは裾野を広げていこうと?
剛 そうですね、今も地元消費が中心です。まずは地域の人に愛される飲み物であるべきだと思っているんです。こんなにりんごが選び放題な恵まれた町は、他にないですからね。
作るのも飲むのも、それを愛している人たちも楽しいシードルの世界
── では、おふたりがシードルに惹かれたきっかけをお伺いできますでしょうか?
暢子 最初は、自分の作ったりんごがこんな形になるのか!ということに面白さを感じていました。そのうちに、だんだんとシードルに関わる個性豊かな人々の面白さにも魅力を感じ、シードルの世界に惹かれていきました。
今まで人前で話すのも苦手だった私が、シードルをきっかけに話す機会も増え、自分の世界が広がり外に出ていくきっかけにもなったんです。さらにこれから楽しいことがあるんだろうなと、今は無限大の可能性を感じています。今ではすっかりお酒の世界に魅了され、醸造所を造るところまできちゃいました(笑)。
剛 シードルはワインと比べるととっても自由なお酒だと思っています。りんごだけではなく、洋梨やレモンの皮など、他の果物も入れて風味をつけてもOK。自由度が高く、堅苦しさがないのも魅力的ですよね。作るのも飲むのも楽しいし、それを愛してくれる人たちも楽しい人が多いんです。
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新設された、VinVie醸造所のようす
── 松川町の生産者もそれぞれ思いを持たれている方が多いのでしょうか?
剛 皆さん個性的ですよ(笑)。やはり農園で大切に作られたものなので、味はもちろんのこと、ラベルや価格に関してもそれぞれ想いが強いですよね。
── 町内のシードル生産者も増えてきましたよね。
剛 たった5年ですけど、随分変わってきましたね。中には醸造所を作る方もいたり。さらにこのシードルブームを盛り上げていくためにも、伊那谷広域でシードルに関わる生産者や飲食店の方が話せるプラットフォームになるように「シードル協議会」を立ち上げ、会長をしています。その他、「NPO法人国際りんごシードル振興会」の理事や、「長野シードルコレクション」の実行委員長も務めているんです。これからも楽しみですね。
伊那谷の農業とお酒の文化の発信地に
── シードルができるまではどのような工程があるのでしょう?
剛 まず、なによりもシードルはりんごが一番大事。りんごを絞ってできたジュースを発酵させただけのシンプルな工程です。なので、8割は畑でできていると言われています。残りの1割を僕が手伝い、残りの1割はお客さんの手元に渡ってからの熟成期間です。
どのりんごを使うのか、ブレンドしたい品種を決め、ジュースを作ります。それをタンクにいれて、発酵させるのですが、だいたいその一次発酵が1ヶ月くらいかかります。
そこからおりを取り除き濾過をして、ここにもう一回酵母をいれます、そして瓶詰めし、6ヶ月間14度の部屋の中にいれておきます。そうすると部屋の中でゆっくりと瓶内二次発酵が進み完成です。
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── 最後に株式会社VinVieの今後について教えてください。
暢子 松川町だけではなく、南信州、伊那谷の農業とお酒の文化をどんどん世界に発信していけるような会社にしたいと思っています。
地域に根ざした農業はすごく魅力ある仕事なのにそれが廃れていくのは悲しいなと思っていて。本当はものすごく楽しい仕事ですし、農業から発展していろいろなことができますよということを伝えていきたいですね。
剛 地域の人たちがここに住んでいることを誇りに思える場所をつくりたいなと思っています。そのひとつの理由がシードルであったらいいなと思っているんです。おもてなしをする観光もいいけれど、地元の人たちが楽しんでいることをおすそ分けするくらいの方が、観光に来た人たちは楽しいんじゃないかなと思っています。
2020年5月にはVinVieのお店もオープンする予定です。試飲や販売もしていきますし、シードルの面白さや美味しさをさらに伝えていきたいと思っています。
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たけむら・のぶこ
株式会社VinVieの代表。南信州まつかわりんごワイン・シードル振興会の広報やりんご農家としての活動も行なっている。シードルの世界に惹かれて、VinVieとしての醸造所を2020年から起動させる。南信州のシードル文化に欠かせない中心人物。
たけむら・つよし
株式会社VinVieの醸造を担当。信州ましのワイン顧問も兼任している他、伊那谷のシードル文化を盛り上げる「南信州シードル協議会」会長、NPO法人国際りんご・シードル振興会理事、「長野シードルコレクション」の実行委員長も務め、南信州のシードル文化を支えている。
VinVie(ヴァンヴィ)
https://vinvie.jp